三本の指

導入部分(日常に潜む違和感)

電車から降りると、いつものように人通りの多い通りを歩く。スマホの画面は暗く、路灯だけが薄明かりを放つ街並みを照らしていた。今日の空気が重い。何か不穏なものが漂っているような気がする。いつもと違う空気感に気づきつつも、俺はそれを無視してマンションへと向かった。
笑い声に関する異変

鍵を開けて部屋に入ると、少しばかりの静けさを感じる。隣室からは、時々テレビの音だけが聞こえてくる。俺は疲れを癒すため、湯船にゆっくり浸かる。窓際で携帯電話をチェックしていると、不吉な笑い声が聞こえた。
「ハッ…」
声は遠くから聞こえるような、またぎこちなく歪んだ音だった。だが、隣室からはテレビの音だけが聞こえてくるはずだ。俺は顔を上げると、窓の外に何かが映り込んでいるのが見えた。白い影のようなもので、消え隠れする。俺の視界の端でちらつくあの白。それは笑い声を聞いた直後だった。
終電とトンネルの恐怖

朝になっても笑い声や白い影は忘れられなかった。俺は会社へと向かったが、いつもよりも不安な気持ちに襲われる。夜には終電を逃してしまう。行き止まりのバス停で待っている間、再びあの笑い声が聞こえてきた。今度はより近くで、俺をじっと見据えるように響く声だった。バスはやってこなかった。俺の目の前で地面から白い影が立ち上がり始めた。それは私達を取り巻くトンネルへと消え入り去った。
救いのない結末

俺は必死に走り出したが、足は重くなるばかりだ。そして、目の前にはあの白い影が現れた。笑声は私の耳元で鳴り響き、俺を飲み込み始めた。恐怖に打ち震える中、その白い影は消え、代わりに空腹な目をした死霊の笑顔だけが私を見つめていた。トンネルの外へ戻ると、そこは人通りの多い駅だった。誰も俺を見ていなかった。俺はただそこに立っていた。
もう逃げられない。